2017年11月03日 更新
妊娠中や授乳中にほくろ除去は可能?赤ちゃんへの影響やリスクとは
妊娠中、授乳中のほくろ除去は、基本的にはあまりおすすめできません。しかし、緊急を要するメラノーマである場合は、皮膚科、美容外科、産婦人科に相談のもと除去を行うことも。妊娠中にほくろ除去を行うリスクとしては、傷が治りにくい、局所麻酔の副作用が起こる危険性、心身ストレス、内服薬が胎児に影響することなどが挙げられます。
この記事は、コスメディカルクリニックシンシア 総院長 又吉秀樹先生が監修しています。
妊娠をきっかけに仕事を退職したり、休暇をとる人も多いでしょう。
自分の時間をゆっくりとれることから、妊娠中に自分磨きに励む人も少なくありません。
たとえば、ダウンタイムがあるほくろ除去をこの間にしておきたい……という人もいるでしょう。
しかし、妊娠中や授乳中にほくろやシミを除去するのは、赤ちゃんに悪影響があるのかが気になるもの。
そこで、今回は、ほくろ除去の前に知っておくべき「ほくろの知識」と妊娠中や授乳中のリスクについてお話します。
ほくろ除去前に!そもそも「ほくろ」とは?

ほくろは知らない間に、顔や皮膚のあちこちに出てきてしまうもの。
じつはほくろは、色素性母斑あるいは母斑細胞母斑と医学的には呼ばれる皮膚病変のことなのです。
ほくろの種類はふたつ
そしてほくろの種類は、大きく分けてふたつ。
- 皮膚表面にある平らなタイプ
- 皮膚表面に盛り上がっているタイプ
皮膚表面にある平らなタイプを単純黒子、皮膚表面に盛り上がっているタイプを色素性母斑あるいは母斑細胞母斑といいます。
ほくろには先天的・後天的がある
ほくろには、先天的(生まれつき)、後天的のものがあります。
後天的なほくろは紫外線の影響や皮膚内にあるメラノサイトが刺激されることでメラニンが発生することが原因でできるそう。
つまり、シミができる原因とよく似ています。
悪性のほくろ「メラノーマ」とは

ほくろのほとんどが放置していても体に害のないとされていますが、なかには悪性のほくろもあります。
それは、皮膚癌のメラノーマ(悪性黒色腫)と呼ばれるもの。メラノーマは、シミの原因でもあるメラニンを産生するメラノサイトがガン化したものです。
メラノーマは、日本で1年間に人口10万人あたり1~2人ほどが発症。頻度の低い癌ではありますが、ほかの臓器、特にリンパ節に転移しやすいのが特徴で、早期発見が大切です。
メラノーマができる原因
メラノーマの発症の原因は、まだはっきり明らかにはなっていません。現時点では、紫外線や皮膚の摩擦や圧迫など、外部からの皮膚への刺激が原因とされています。
日本人においてはメラノーマができる場所は足の裏が多いそうなので、足の裏のほくろには注意が必要です。
また、大きなほくろや急激に増大したほくろなども、メラノーマの疑いがあります。
メラノーマの簡単チェック
自宅で簡単にメラノーマ(悪性黒色腫)がどうかチェックする方法があります。
- 大きさが6mmを超えているか
- 形が左右で非対称
- 外形が、丸みを帯びないで、ギザギザや不規則になっている
- 最近、急激に大きくなった
- 色がまだらである
上記にあてはまる気になるほくろを見つけた場合は、早急に病院で受診することをおすすめします。
妊娠中や授乳中にほくろは変化する?

ほくろことが十分理解できたところで、妊娠中、授乳中との関係をみていきましょう。
妊娠中や授乳中は、プロゲステロンやエストロゲンといった女性ホルモンの分泌が多くなる影響で、メラノサイトという色素が濃くなっていきます。
今まであったほくろも、メラノサイトが刺激されることで濃くなり目立ってしまうため、妊娠中になると一見ほくろが増加したように感じたり、実際にほくろが大きくなったりするようです。
そのため、「妊娠中にほくろやシミが多くなってきた……」と感じる人もいます。
また、外陰部や乳首、お腹にある正中線も、妊娠すると色の変化が目立つ場合もありますが、これらも女性ホルモンの影響で色素沈着が起きたためです。
ただし、出産後の数か月で色素沈着は元に戻るようです。
ほくろ除去は妊娠中や授乳中にしても大丈夫?

妊娠中や授乳中は色々な制限がありますが、増悪する可能性のあるほくろは、緊急を要するため、皮膚科や美容外科、産婦人科で相談のうえ除去を行うことがあります。
また、美容目的のほくろ除去の場合は、美容整形外科や皮膚科の医院の方針に異なります。「妊娠中のほくろ除去はお断り」や「授乳中ならOK」といったそれぞれの判断に違いがあるようです。
しかし、美容目的のほくろ除去は、緊急を要するわけではないため、妊娠中、授乳中は避けることが無難です。
どうしてもほくろ除去を行いたいといった場合は、あくまでも自己責任の下で行うことになります。
一般的に妊娠中の方へは、局所麻酔による治療の影響を考えます。(注射をすること自体のストレスも含めて)
・妊娠初期は胎児への影響考えて基本的にすべての緊急性のある治療以外は控えることがおすすめ。
・妊娠中期は比較的安定しているので産科主治医の許可をもらって行うことが無難。
・後期から出産直前まではお腹が張ったり早産の可能性もありうるので控える。
・授乳中、ストレスに弱い人の場合など先に授乳を済ませる、搾乳をしておくなどの工夫をする。
いずれにしろ、悪性黒色腫などの非常に危険な疾患の場合は緊急を要すると考えられるので皮膚科と産科が連携して治療に当たることが重要です。
妊娠中や授乳中のほくろ除去リスク

まず、結論としては妊娠中のほくろ除去は、あまりおすすめできません。なぜなら、妊娠中は予測できない体調の変化があります。
しかし、「どうしても、妊娠中の育休を使って、大きなほくろだけでも除去しておきたい……」という人に向けて、妊娠中や授乳中のほくろ除去リスクをまとめました。
妊娠中はほくろ除去の傷あとが消えにくい
妊娠中は、肌荒れや色素沈着しやすいため、ほくろ除去を行ったとしたとしても、傷あとが非妊娠時より残りやすいことも。
ほくろがなくなっても、そこに傷あとが残ってしまっては余計に目立ってしまうかもしれません。
局所麻酔の副作用が起こることも
ほくろ除去方法は、通常レーザーやメスで切開するのがメインです。そのため、治療前には局所麻酔が必要になります。
ほくろ除去の局所麻酔に使用されるキシロカインは、比較的副作用が少ないとされていますが、使用するとめまいや吐き気、眠気などが起こることも。
ほくろ除去のときに使用する局所麻酔の量はごく微量だそうですが、起きる副作用の程度には個人差があるので明言はできません。
また、ごく希にキシロカインアレルギー症状を示す人もいます。
局所麻酔でアレルギーがあるかどうか知りたい場合は、医師に相談すれば、事前に検査することもできる場合があります。
キシロカインアレルギーと自分で思っている人のうちのほとんどが、注射ストレスによる迷走神経反射です。
座って受ける歯科治療では意識が遠くなるような症状がでても、平らな状態で行うほくろ治療では症状が出ないことがほとんどです。
しかし、妊娠中に注射ストレスが過剰に出る可能性のある方は通常よりも胎児に対するリスクはあると思って良いでしょう。
また、心配な方はキシロカインのアレルギーテストを受けるのも検討する価値があります。
心身ストレスは胎児に影響することも
実は局所麻酔が、ほくろ除去でもっとも痛いといわれています。
具体的な影響は証明されていないものの、こうした痛みによる心身の疲労は、胎児に影響を与える可能性があります。
内服薬が胎児に影響することも
メスで切開した場合は、傷あとが化膿しないように、1週間ほど抗生物質を飲んで感染予防をしなくてはいけません。
この抗生物質は、妊娠中でも服用が可能な物が処方されますが、長期間の服用は赤ちゃんにどんな影響があるのか予想ができません。
妊娠後期には、比較的薬の影響は少なくなるようですが、赤ちゃんの発育や環境に影響が出る胎児毒性の心配もあります。
【妊娠中に服用できる抗生物質】
- ペニシリン系: パセトシン、ペングット
- セフェム系: セフゾン、フロモックス
- マクロライド系: クラリスロマイシン、ジスロマック
薬剤による先天性の異常の大半は妊娠初期に起こるので17週までは避けたほうが良いでしょう。
母乳に影響が出ることもある
ほくろ除去で服用する薬は、微量ですが母乳に移行するとされています。
そのため悪性のほくろ除去でないかぎり、授乳中は赤ちゃんに不必要な抗生物質の服用は避けたいものです。
できればもう少し待って、断乳した後にほくろ除去をするのがやはり理想的です。
妊娠中や授乳中のほくろ除去方法

それでも事情があって、ほくろ除去をしておきたいという人に、ほくろ除去治療方法をご紹介します。
治療方法は大きくふたつで、メスで皮膚を切開する方法とレーザーで治療する方法があります。
今回は、3種類のほくろ除去方法について説明します。
- くり抜き切除
- 切除・縫合法
- 炭酸ガス
1. くり抜き切除
くり抜き切除とは、ほくろをメスで丸くくりぬいて切除する方法。ほくろをすべて切除するので、再発の心配がありません。
しかし、ある程度深く切り込む必要があるので、傷あとが治るまでに時間がかかるのがデメリットかも。
また、ほくろが5mm以上ある場合にくり抜き切除を行うと、傷あとが陥没したり、皮膚が赤く盛り上がったようにケロイド化するおそれがあります。
治療後は出血がありますが、止血の軟膏を塗ってテープで固定するのがほとんど。傷あとの状態によっては、縫合しなくてはならない場合もあります。
2. 切除・縫合法
切除・縫合法とは、ほくろを紡錘形にカットして、縫い合わせる方法。切除・縫合法は、:5mm以上の大きいほくろを切除するのに適しています。
ただ切除・縫合法には、かなりのスキルが求められるため、医師選びを納得するまで行いましょう。
3. 炭酸ガス
炭酸ガスによるほくろ除去とは、ほくろを削り取っていく方法。
治療後は、一時的に陥没したような傷あとになるため、大きなほくろの場合目立ちやすいそう。治療から1〜3か月後、徐々に傷跡が上皮化し元通りになります。
レーザーを当てている時間は比較的短く、治療後に薬の内服がないため、授乳中でもほくろ除去が可能だそう。
ほくろ除去のアフターケア

ほくろ除去した後は、赤みや若干の腫れ、内出血、患部に熱を帯びるといった症状が現れます。
そのため、担当医師によって多少やり方に違いはありますが、アフターケアとして1週間ほどは患部に軟膏を塗り、その上に絆創膏を貼ります。
数日で回復するものの、顔の場合は、しばらくは傷あとの上にメイクすることは控える方が良いそうです。
ただし、レーザー治療は、比較的傷の治りが早いので、患部が乾燥してカサブタができてきたら、メイクOKになります。
赤ちゃんの影響を考えて慎重な判断をしよう

今回は、妊娠中や授乳中のほくろ除去について紹介しました。
妊娠中や授乳中はどの時期でも、赤ちゃんへの影響が心配です。ただ長期休暇を利用したい気持ちも女性にはあるもの。
しかし、美容目的のほくろ除去は、自己責任とは言えども無理はせず、赤ちゃんへの影響を考えながら、慎重に検討するようにしましょう。
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医療・薬剤に関する情報の指摘
又吉秀樹
悪性黒色腫(メラノーマ)の『ABCDE』といわれているものがあります。
A:Asymmetry(非対称性)
B:Border Irregularity(辺縁が不整)
C:Color(色調がまだら)
D:Diameter(径6㎜以上)
E:Evolving(経時的に変化している)
以上が当てはまるようでしたらなるべく早く皮膚科を受診しましょう。